#057 セラドン焼
中国から青磁を焼く技術が伝えられ、タイの風土の中で独自に発展したセラドン焼は、タイ北部の古都、チェンマイでつくられています。厚くぽってりした土と、焼くと翡翠色に見える木灰を使った釉薬は、地元チェンマイの土地で採れるものを使用しています。
焼成による縮みを計算し、完成品よりひとまわり大きく成型します。フチを丸く滑らかに整えられ、約800度で素焼きすると、黒っぽい土から赤みを帯びた色に変化します。木灰の釉薬をかけた後、再び約1250度〜1300度の高温で焼成してできあがりです。釉薬に含まれる微量の鉄分が還元されて酸化第一鉄となり、緑がかった色に仕上がります。ひび割れのように見える貫入は、窯出しの際の温度差でできるものです。
セラドンの語源は、サンスクリット語の「SIRA=石」と「DHARA=緑」を合わせた「緑の石」であるといわれています。自然の素材のみでつくられ、まるで宝石の翡翠のように美しく輝くセラドン。翡翠は幸福と成功を導く色とされ、古くから珍重されてきました。工場では器のような日用品の他にも、タイで神聖な動物とされる象の置き物や、仏像などもつくられていました。現在もタイの人々の日常生活で使われ、愛されている証といえるかもしれません。