#253 ベトナム
スクーターの群れが次から次へと通り過ぎ、道端にはプラスチックのスツールを並べた露店がひしめきあうベトナムの街。しかし街を一歩出ると、緑豊かな田園風景が広がり、心地よい風や木々のざわめきを感じることができます。
東南アジアの中央に位置するベトナムでは、ほとんどの地域で一年中作物が生育し、年に何度も米を収穫することができます。作物を育て、刈り取り、売るという途切れないサイクルの中でくらすには、すべてを手早く準備しなくてはなりません。そのためベトナムの人々は、日常生活に必要な道具を短時間で正確につくり上げる技術を身に付けています。
竹かごの材料は、中国に近い山岳地帯に住む人々が竹を山から運び、竹材市場で長さをそろえるなどして売られます。竹かご職人が次々と現れ、荷台にいっぱいの竹材を仕入れていきます。職人は自宅の工房で家族と一緒に黙々と竹かごづくりに精を出します。家庭で使う便利な道具をつくるため、市場で新しい竹の束を買い求め個人で加工する人も珍しくありません。 竹かごをつり下げた天秤棒を担いで物売りをする人々も、ベトナムの風景に欠かせないひとコマです。