#119 Plain Style - 澄 敬一さん
Plain Styleとは、今回Found MUJI 青山での企画展に際して出した冊子のアートディレクションを担当された山口信博さんが、澄敬一さんと松澤紀美子さんを表す言葉として名付けたものです。
受け取り方はざまざまでしょうが、彼らのモノの「素」の価値を見つけ出すという作風も含めて、対象に向き合う姿勢、暮らし方のすべてが「プレーン」である、ということだと解釈しています。
澄敬一さんは、捨てられているものなどを拾ってきて作品につくり替えます。「作品」という言葉が適切かどうかはわかりません。澄さんと松澤さんのアトリエで使われているほとんど全てのものがそうして出来上がっていますから。
例えば、捨てられている傘を集めて、木製の柄の塗装を剥がし、その曲線を生かしてS字フックやコートハンガーなどをつくります。普段見慣れているはずの傘の柄なのに、一見「これはなんだったっけな?」と不思議な気持ちにさせてくれるものです。ほとんどの柄が積層合板で出来ているのを発見できるのも、これらの作品の特徴。澄さんは「ミルフィーユ」と表現していますが、塗装をしない積層された表面の愛らしさを知ることができます。 このほかにも、アルミのアルマイトコーティングを磨いて落とした容器や、金庫の中身の機構のみをつかったお弁当箱などユーモアとウィットに溢れた多種多様な作品があります。しかし一貫して、ものの成り立ちや、本来の機能や素材感に気づかせてくれる品々です。
今回のFound MUJIの企画に向け、澄さんが無印良品の「壁に掛けられる家具」のシリーズのブラケットと傘の柄を用いた、ウォールフックを提案してくれました。日本国内では唯一、積層合板の傘の柄をつくりつづけている栃木県の木工房にお願いして製品化しました。廃材を磨いてつくったオリジナルとは異なりますが、澄さんの遊び心が加わった意匠を生活にも取り入れられる製品となっています。
開催店舗:Found MUJI 青山