#243 ポット
ドイツに生まれた総合教育機関『バウハウス』は、1923年に開校以来の教育成果を披露するため展覧会を開催し、過去校内の工房で制作された作品群、絵画や彫刻などの展示の他、校内の各工房が協力して建設した『実験住宅』が目玉のひとつとして展示されました。
その『実験住宅』の特徴のひとつとして、独立した"キッチン"が提案されています。それまでキッチンは、炊事、洗濯、裁縫など家事労働をひとまとめにした部屋のなかに置かれていました。その考え方から、炊事機能を空間として分け、より家事のしやすい環境を提案したのです。
その『実験住宅』のキッチンの為に、デザインされたのが、『ポット』です。"ZUKER(砂糖)"、"MEHL(小麦粉)"、"KAFFEE(コーヒー)"などと書かれたこのポットは、バウハウスで学んだテオドール・ボーグラーがデザインし、展開会で発表した当時から生活用品として量産を想定されていました。生活全体を変えようとしたバウハウスの思いが、『実験住宅』やこれらポットからも感じられます。
展示会当時の様子 『バウハウスの実験住宅[中央公論美術出版]』より