#094 日本の布をめぐる旅 4
松阪木綿
三重県にある松阪木綿の機屋さんを訪ねた季節は、強い日差しが照りつける真夏でした。青く広い空を背景に、深い藍色のかせ糸が整然と並ぶ情景はとても美しく、暑さの吹っ飛ぶ清々しい気持ちになりました。御糸(みいと)という地名がついていたほど、伊勢神宮と深いつながりのあるこの場所では、毎年木綿の藍色の反物を伊勢神宮に納めてきました。元々、染めは男性の仕事、織は女性の仕事として農閑期につくられていたそうです。以前はこの地域でも数軒の機屋さんがありましたが、今ではたった一軒残るのみ。明治から続く機場では、無地や粋な縞模様を今も織り続けています。藍の色はその濃度により、4つの色に区別されています。淡い色からカメノゾキ、アサギ、ナンド、紺と呼ばれ、淡いカメノゾキは甕を覗く程度という意味があるそうです。機械化された藍染めの甕の中では、藍の花が咲く、と表現される藍色の泡ができ、藍が元気に生きている姿が伺えました。