#099 日本の布をめぐる旅 8
有松・鳴海板締め絞り
瓦葺き屋根の街並みが残された愛知県名古屋市の有松。絞り染めで有名な有松・鳴海絞りには100ほどの絞りの種類があると言われています。数ある技法の中には糸でくくる絞りの他に、生地を小さくきれいに折り畳み、板で挟み染める板締め絞りがあります。4種の板と畳み方だけで柄を変えていく雪華絞りは、染色する位置によりさらに複雑な模様をつくりあげます。染め上がった生地を水の中で開いていくと、まるで海の中に花が咲くような姿。この姿が雪の結晶のような模様に見えるところから雪華絞りという名がついています。ここでしかつくられていないもう一つの板締め、豆絞りは、細い幅に折り畳んだ生地の束を溝のついた板に挟み込んで染色します。この特殊な絞り方は、昭和初期まで途絶えていたものを先々代の方が復活させ、今に続いているそうです。一度に3反ずつ、合わせて39反を染める作業は年に数回。大変な作業からは想像もできないほどかわいらしいひとつひとつ微妙に異なる小さな青い豆粒が現れます。