#100 日本の布をめぐる旅 9
甲斐絹
かつて甲斐の国と呼ばれた山梨県で織られる甲斐絹。羽織の裏地として使われる高級な絹織物として、江戸時代初期から生産されてきました。撚りのない絹糸を使うことで、軽く、さらりと薄くなめらかでありながら、こしがあり、独特の光沢を放っています。甲斐絹の産地は、富士山の麓にあり、その湧き水で絹糸を染めてきました。富士の湧き水はその成分により、発色よく染まると言います。こうした自然環境に恵まれて、昭和初期まで甲斐絹の産地として発展してきました。今では甲斐絹そのものは織られなくなりましたが、甲斐絹の伝統技術を受け継ぎ、細番手高密度の様々な絹織物が織られています。細く密度のある経糸に強い撚りのかかった緯糸を入れることで軽くふわりとした絹の布ができあがりました。