#228 伊賀の耐熱調理道具
伊賀焼の里、丸柱(まるばしら)を訪れたのは春先のこと。あぜ道まできれいに草が刈り込まれ、手入れの行き届いた美しい田園風景が広がっていました。
土鍋の産地として有名な伊賀では耐火、耐熱度の高い陶土が採れ、江戸時代より行平鍋や焙烙(ほうろく)といった調理道具がつくられてきました。 伊賀陶土は300~400万年前に堆積した古琵琶湖層に由来します。 河口付近に積った粒子の荒い蛙目(がいろめ)粘土と、湖の中心部に沈殿した炭化した植物を含む木節(きぶし)粘土を混ぜて利用します。 焼き上がると粘土の層に細かい気泡が生まれます。直火にも強く、空気の層に熱をたくわえるので保温性に優れ、熱がじっくり均等に伝わることで食材の風味を引き出します。
直火にかけて使う焙烙は、胡麻や茶葉、塩、米、豆、銀杏などを焙じるための調理道具です。 「焙じる」というのは熱して食材の水分を飛ばすこと。やがて焦げはじめ、芳ばしい香りが広がります。 焙じることで風味が増すだけでなく、茶葉であればカフェインが減少したり、食材は生の状態より栄養素を吸収しやすくなったりと、昔ながらの食の知恵でもありました。 フタをしなくても弾けた食材が飛び散りにくい丸み、焙じた食材を取手の穴から取り出せるなど、長い時間をかけ完成した使いやすいかたちです。
【ほうじ茶のつくりかた】
材料:緑茶の茶葉 大さじ3
① 焙烙を弱火で3分温める。
② 火を止めて茶葉を入れる。
③ 強火にし少し持ち上げて焙烙を水平に振りながら焙じる。
④ 好みの色味になったら火から下ろし皿や紙に移して冷ます。
※持ち手は熱くなるので注意してください。