#303 エスパルトのかご
エスパルトは、南ヨーロッパと北アフリカに自生する多年生植物です。何の変哲もない雑草に見えますが、細くて強靭なことから何世紀にもわたりさまざまな用途に使われてきました。岩だらけの荒地に自生し、いつでも必要なときに採取できるこの草は、この地方の貴重な資源となっています。
日常生活の中で以前ほど使われなくなっていますが、エスパルトは今も人々にとって身近な素材です。より装飾的な製品の人気が高まっているとはいえ、今でも工芸品として愛され、郷土の伝統として深く根付いています。
最も一般的なのは、刈り取ったエスパルトを平たく束ねて三つ編みにする手法。編んだ束の端を縫い合わせてさまざまな形に仕上げていきます。また、叩いて柔らかくしてから編み上げ、表面を毛羽立たせて素朴な風合いを出す手法もあります。これ以外にも、交互に編んだり、巻いたり捻ったりなど、さまざまな手法を使い分けることで、かごの機能や仕上がりの印象が異なってきます。エスパルトは、幅広い応用のきく素材です。